業務記録や点呼記録をつけない・保存しない・改ざんする — これらには車両の使用停止処分が定められています。車が1台の一人親方にとって、使用停止はその期間営業そのものが止まる処分です。この記事では、国土交通省の処分基準にもとづいて「何をすると・どれだけ止まるか」を解説します。
制裁は「罰金」と「行政処分」の2種類
軽貨物(黒ナンバー)の義務違反に来るものは、性質の違う2つに分かれます。どちらも「罰」であることに変わりはありませんが、来かたが違います。
- 罰金・過料(法律で決まっているもの): 貨物軽自動車安全管理者を選任しない・届出をしない(各100万円以下の罰金)、重大な事故を報告しない(50万円以下の過料)など。対象は2025年4月法改正のまとめで解説しています
- 行政処分(処分基準の通達で決まっているもの): 業務記録・点呼・事故記録・日常点検などの日々の義務の違反に対して、監査で確認されたときに行われる車両の使用停止処分や事業停止処分
つまり、毎日の記録の義務に来るのは罰金ではなく行政処分です。「記録類に罰金の定めはない」という紹介だけを読むと何も起きないように見えますが、制裁の置き場所が違うだけで、車が止まるという実害はむしろこちらが直接的です。
「10日車」とは — 車1台なら10日間営業できない
行政処分の量は「日車」という単位で決まっています。10日車は「車両1台を10日間使用停止」です。車両が複数あれば台数と日数に配分されますが、車が1台の一人親方は配分のしようがなく、そのまま「10日間車を使えない」=10日間の営業停止と同じ結果になります。
使用停止処分では、車検証の返納、またはナンバープレートを取り外して運輸支局に預ける「領置」が命じられます(貨物自動車運送事業法第34条、軽貨物には第36条第2項で準用)。いずれも「処分は受けたが黙って走る」をできなくする仕組みで、処分の期間が終われば返されます。
記録関係の処分基準(抜粋)
処分の量は国土交通省の処分基準の別表で公開されており、黒ナンバーには通達(国自安第73号)の8の準用規定で同じ別表が適用されます。ここから日常の記録に関わる行を抜粋します。再違反は初違反の倍です。
| 違反行為 | 初違反 | 再違反 |
|---|---|---|
| 業務記録: 記録なし(30業務中5件以下) | 警告 | 10日車 |
| 業務記録: 記録なし(30業務中6件以上) | 10日車 | 20日車 |
| 業務記録: 全て記録なし | 30日車 | 60日車 |
| 業務記録: 改ざん・不実記載 | 60日車 | 120日車 |
| 点呼: 未実施(100回中19件以下) | 警告 | 10日車 |
| 点呼: 飲酒運転防止に係る点呼実施義務違反 | 100日車 | 200日車 |
| 点呼記録: 全て記録なし | 30日車 | 60日車 |
| 点呼記録: 改ざん・不実記載 | 60日車 | 120日車 |
| 事故記録: 記録なし(3件以上) | 10日車 | 20日車 |
| 事故記録: 記録の保存義務違反 | 警告 | 10日車 |
| 記載事項等の不備(業務記録・点呼記録・事故記録とも) | 警告 | 10日車 |
| 記録の保存: 全て保存なし(業務記録・点呼記録とも) | 30日車 | 60日車 |
| 日常点検: 未実施(1台・1月に15回以上) | 5日車×台数 | 10日車×台数 |
「全て記録なし」と「全て保存なし」は、記録をつける義務と残す義務が別々に定められているための別の行で、処分量は同じです。監査で記録を出せなければ、どちらとして数えられても同じ重さになります。一方、書いてはいるが項目が足りない「記載事項等の不備」は、表のとおりどの記録でも初違反は警告どまりです。つまり「完璧でない記録」と「記録がない」の間には処分上も大きな差があります。
記録がないと「やっていない」扱いになる
処分基準には「点呼の実施については、点呼の記録によって確認する」と明記されています。実際には点呼をしていても、記録がなければ原則として未実施として扱われます(書面等で実施を証明できた場合を除く)。記録は義務であると同時に、「やっている」ことを証明できる唯一の防御でもあります。
最も重いのは改ざん — 正直な記録が最善の防御
表のとおり、記録の抜けは警告から始まりますが、改ざん・不実記載は初違反でいきなり60日車です。やっていない点呼や業務をやったことにして埋めたり、都合の悪い記録を書き直したりすることがこれにあたります。事実と違うことを書かないことが、最も損の少ない対応です。
悪質な場合は罰金・事業停止まで進む
行政処分の先には、より重い段階が用意されています。
- 監査で報告をしない・虚偽の報告をする・検査を拒む — 100万円以下の罰金(貨物自動車運送事業法第75条)
- 貨物軽自動車安全管理者を全く選任していない — 30日間の事業停止処分(選任義務違反の100万円以下の罰金とは別に)
- 使用停止処分の期間が合計6月を超える — 6月間の事業停止処分
- 使用停止・事業停止の処分に従わず営業を続ける — 1年以下の拘禁刑または150万円以下の罰金(併科あり・同法第71条)
やることは単純です
ここまでの表を裏返すと、やるべきことは3つだけです。毎日記録をつける・決められた期間保存する・嘘は書かない。点呼も点検も、実施して記録するまでがひとつの動作です。毎日の記録の習慣が、そのまま監査への備えになります。
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